秋、

寒い

その一言から目覚めた。

 

そう、寒いのである。文章が寒いとかネタが寒いとかではない。脳と体が驚き、慌ててスイッチを入れるレベルで布団の外の温度が低かったのだ。

 

「私は夏が好き!」とか「私は冬かな~」とか言ってる人がいる。春や秋も例外ではない

その理由はそれぞれで海が好きだからとか一番過ごしやすいとか、はたまた自分が生まれた時の季節が好きという変わり種もいる。なんだお前は、この世に産み落とされた瞬間から日本の四季の情緒をたしなむ赤子だったのか。親御さんはさぞ困惑しただろう。ベビーベッドで正座しつつ外の景色を望み、ミルクを飲む赤ちゃん、可愛くない。

 

私は好きな季節がない。というより次の季節が来るとそれまでの季節を忘れてしまう。比喩表現ではない、本当に忘れるのだ。

それまでの季節を回想したとき、たいてい思い出が残っている。夏なら野外フェスに行ったこと、冬なら珍しく雪が降ったこと、春なら桜が咲く道を歩いたこと、秋なら道端の落ち葉と風と共に歩いたこととか。それぐらいなら私も記憶したまま次の季節に進む。

 

しかし、体が覚えていない。寒さ、暑さ、心地よい風、雨の匂い。その時は感じていたはずの感触を、思い出以上のことを思い出せないのである。これは誠に不便である。「好きな季節論争」になったときには、もうその季節を言うしかない。

好きな季節:今

理由:今が一番、Now is the best time

湖の真ん中に建てられた城のごとく、攻め方もなければ守る方法すら存在しない。一番初めに流される意見である。予想されるリアクションは「あっ、ふーん」。申し訳ない。理由さえ聞かれない。申し訳ない。いちいち話すのも面倒くさいからこのブログを読んでほしいものである。

 

ところでこれを書きながら腹が異様な音を立てている。今日から10月、牙をむきすぎではないか、秋。寒いぞ、秋。残暑はどこ、秋。トイレが待っている。